きみと真夜中をぬけて
「なんだねその顔は」
「なんだねって…いや、意味が全然わからないって顔……、してるつもり」
「わはっ、なるほど。いいねいいね、面白いよ蘭」
どこが面白かったのかはわからない。
けれど、肩を揺らして笑う綺があまりにも自然体だったから、本当に私の何かがツボに入ったということだけは伝わった。
「なあ、蘭」
蘭。たった二音を、綺は大切そうに紡いでくれるから、今夜この場所に来てから、名前を呼ばれるたびにどこか懐かしい気持ちになる。
「世界はさぁ、俺たちのためにできちゃいないんだ。だから適応できないのは仕方ないし、好きも嫌いもまともに見つからなくたって気に病むことはないと思う。でも、たとえ望まない世界でも、生きてるからにはできるだけ楽しく過ごしたいと思わん?俺は思ったね。だから見つけた。星を見てる時だけは、俺はこの世界を好きになれる。こんなつまんない世界にも綺麗なものってあるんだーってさ」
「……私は、」
「見つけるしかないんだよ。自分が世界を生きる理由をさ」