きみと真夜中をぬけて






夜空を見上げて、綺がふーっと息を吐く。

空気に溶けていく二酸化炭素みたいに、空っぽな自分も一緒に開放してあげられたら、世界はもっとラクだった。


それが出来ないから、みんな、何かと闘って生きている。



世界は、私たちのために出来てはいない。だから───見つけるらしい、生きる理由(いみ)を。




「てかね。あんたの恋、確実に間違いだからね」

「間違いかどうか蘭が決めることじゃないですなぁ」

「だって私たち、まだ”とりあえず”友達になったばっかりだもん」




可笑しな奴に捕まった。恋も友情もまともに区別できていないような男。

けれど、この出会いが漠然と、私にとって大切でかけがえのないものになるような気がしたから。




「……ほおぉ、蘭 かわいいとこあるね」

「うっさい。また聞かせてよね、綺のどうでもいい話」

「どうでもいいってなんだよ。どうでもよくねーよもはや恋バナだぞ」

「だから違うって…」




また きみのどうでもいい話(恋バナ)、聞いてあげようと思う。


< 37 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop