きみと真夜中をぬけて
*
「お、来た。やっほー好きな人」
「その絡み方なんなの?そろそろ飽きないの」
「飽きるとかじゃねえんだわ。恋心を噛みしめようとしてるだけ」
「恋じゃないってば」
「俺は恋なのー」
「…頭おかしい」
「多少のイカレ具合は人生において必要なことであーる」
ひんやりと冷たい温度をお尻に感じながら、ティッシュで軽く水気をふき取ったベンチに座る。
今宵も私の第2の家にやって来た綺は、どや顔でそう言った。なんなら「どや!」って口で言った。どやもなにもないのだけれど。
プシュ、と缶を開ける音が聞こえ、流れるように隣に座る綺に目を向けと、その手には600mlのコーラ缶が握られていた。600mlなのにペットボトルじゃなくて缶なんだ…となんとなく思う。