きみと真夜中をぬけて
「暑いなぁ、夜なのに」
「夏近いよ」
「よな。やっぱ夏は炭酸しか勝たんのだ」
ごくごくと喉を鳴らしてコーラを飲む綺の横顔をぼんやりとみつめる。
彼は、綺 という名前が良く似合う、繊細な雰囲気を持っている。黒髪が、白い肌によく映えていた。
日之出 綺。
公園で落ち合うだけの、夜だけの、健全な友達。とても不思議な関係ではあるものの、同時に毎晩どうでもいい話をするだけの日々に楽しさを覚え始めていた。
「で、蘭」
「ん?」
「今日はいつもよりマイナス5くらい覇気がないな。聞いてほしいことでもあれば、俺は菩薩の心で聞くぜ」
綺は人を───私を、よく見てる。
綺とはじめて会ったのは10日ほど前のことで、ここで落ち合うのもまだ両手で数えられるくらいなのに、今日に限らず綺は私の変化によく気づく。
思い返せば、女の子の日がきてちょっとイライラしていた1週間前はあまり会話をせずぼんやりと空を眺めるだけだったし、夕飯に好物の八宝菜が出た時は「いつもより機嫌良いね」と言われた。