きみと真夜中をぬけて




前髪が短くなったこととか、つけてる香水が変わったとか、体感したことに気づける人ももちろん素敵だとは思うけれど、綺はそれとはまた違う。

彼は、人の纏う雰囲気や心情を察して、慎重に、寄り添おうとしてくれる。


10日、綺と同じ夜を越えて気づいた。
彼は、人の変化にとても敏感みたいなのだ。



「…綺さぁ、将来はカウンセラーとか向いてるんじゃない」

「なんだよ急に」

「人の気持ち、察するの得意じゃん。欲しい言葉を欲しい時にくれるし、重苦しい空気じゃなくて、わざと笑わせようとしてくれてるんでしょ。菩薩とか」

「菩薩はガチ」

「まじか」



今日も星は見えない。

いつになったら満点の星空が見える天気になるのかな、と考えるけれど、この公園は住宅街の端っこにあるとはいえ街灯がちらほら灯っているから、完全に星だけの輝きを見るには場所を変えなきゃいけない。



もしいつか、無知な私でも概念ごと抱きしめたくなるような、そんな夜に出会えたら。

その時は綺が隣に居たらいいなと、そんなことを思うのだ。



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