きみと真夜中をぬけて
ふー…と深呼吸をして、「綺」と彼の名前を紡ぐ。
ぐーっとコーラを飲んだ綺は、そのまま首をこちらに向けて、「うん」と言った。
「今からすごく、どうでもいい話してもいい」
「恋バナ?」
「ちがうよ。思い出話」
「うん、いいよ」
「綺からしたらすごくどうでもいい話かもだけどさ」
「好きな人の思い出話、どうでもいいって思う奴は多分人間じゃねえぞ」
「菩薩の心で聞いて」
「菩薩じゃなくても聞くよ」
「まじか」
「まじだよ」
綺の言葉にどこか漠然とした優しさを感じて、少しだけ、泣きそうになった。