きみと真夜中をぬけて
人に話すのは、これが初めてのことになる。
「……手紙が届くんだ」
ぼやきにも近い私の静かな呟きは、夜の空気に容赦なく溶けていく。膝の上で拳を握りしめる。手汗がにじむ感覚がどこか気持ち悪かった。
「前に、……不登校になる前に仲良くしてた子から。毎月末の方にさ、手紙来るの。すっごいね、毎回レターセットの柄が違くてね」
「ほうぅ」
「私が好きそうな…レトロな、和紙とか。和紙ってわかる、綺」
「わかるわ。なんかあれだろ、ぺらぺらの薄いやつ」
「あながち外れてはないけど、その言い方はなんかやだ」
「うーそ。お洒落なやつな。もらったことあるからわかる」
「え、彼女?」
「妹」
「あ、そう」