きみと真夜中をぬけて







ポストに初めてそれが投函されたのは、私が不登校になってちょうど1か月が経とうとしていた時だった。

仕事から帰って来た母が、控えめに私の部屋をノックし、「蘭宛てに手紙が来てんのよ」と、どこか嬉しそうに言っていた。



『誰から?』

『藤原 杏未って書いてあるよ。ほら、『名生蘭さまへ』ってさ』

『あみ……』



藤原 杏未(ふじわら あみ)

知り合いに────友達に、その名を持つ者がいた。



高校1年生の時からの知り合いだ。中学の同級生だったので、厳密には13歳からの知り合いではある。

しかしながら、中学時代にまともな会話をした試はなかったので、友達という括りでは15歳からになる。


藤原杏未。人にあまり意見しない、世間一般で「優しそう」と言われがちな雰囲気を持つ女の子だった。



仲良くなったきっかけは高校1年生で同じクラスになったこと。


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