きみと真夜中をぬけて





『名生さん……、だよね』

『…あ、藤原さん』



入学してはじめて彼女と交わした会話はそれだった。


藤原杏未と面識はなかったものの、中学2年生の時にじゃんけんで負けてクラス委員をしていた不運な女の子、という認識をしていたので、話しかけられた時、「あの不運な子か」と、すぐに記憶を思い返すことができた。


同じ中学校出身の人を見つけたから話しかけた。私の中学校から同じ高校に進学した同級生は彼女しかおらず、話すことが必然と言えばその通りだった。



『名生さん、同じ学校だったんだね…』

『うん。うちの学校からここ来る人少ないよね、遠いし』

『遠いよね。わかる…!』





友達ってこうやって始まるんだなぁと、ぼんやり思った記憶がある。
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