きみと真夜中をぬけて
私たちはお互いを「蘭ちゃん」「杏未」と呼ぶようになった。これもまた成り行きだった。名字だとよそよそしいよね、そう言ったのは私だったような気もする。記憶はすでに定かではなかった。
初めの数週間はふたりでいることが多かったけれど、だんだんクラスにも打ち解けるようになり、派手な見た目の女の子ふたり──マイとシホとの交流が始まった。
高校1年生。私と杏未、マイとシホは仲の良い4人グループとしてクラスでも確立していった。初めのころはよかった。違和感はなく、本当に心から、私は3人のことが大好きだった。
春休みが明けて、学校に行くと、私はひとりになっていた。桜井くんの件でマイの機嫌を損ね、シホは完全に私に敵意を向けるようになった。
杏未は、何もいわなかった。人に意見をしない子だ。マイやシホのような女子に歯向かえるとは到底思えなかったので、何となくそうだろうなとは思った。