きみと真夜中をぬけて




不登校になった。
学校に行くのが、怖くなってしまった。


心が完全に死んでしまう前に逃げたことを母は責めない。それが、唯一の救いだった。

初めて学校を休んだ日、マイやシホは当然のごとく、杏未からも連絡はこなかった。一緒に過ごした1年がまるでなかったみたいに、私たち4人の友達 “ごっこ”は終わりを告げた。



だから、杏未から手紙が届いた時は、ただこわい、と思った。



1通目は、淡い紫のシンプルな封筒だった。黒のボールペンで、〈名生蘭さまへ〉と書いてある。

その字はよく整っていて、線が細かった。よく覚えている。0.38mmのボールペンが細くて書きやすいから好きだと、杏未から聞いたことがあった。



「蘭が好きそうなレターセットだね」


母が嬉しそうに笑う。返す言葉がなかった。


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