きみと真夜中をぬけて
「つーか、」
ずっと黙って聞いていた綺が口を開く。
前かがみで太もものあたりに肘を乗せて頬杖をつき、目線だけを私に向けた。光沢のある、綺麗な瞳だった。
「蘭って不登校なん?」
「え、そうだよ」
「ほえぇ」
「言ってなかったっけ」
「言ってねーよ」
不登校であることを言わずしてこの10日、綺とどんな話をしてたんだっけと回想する。
綺は最近酢豚にはまってるとか、私は最近寝る時に付ける蒸気でホットアイマスクの香料をラベンダーから柚に替えたとか、そんなたわいない会話ばかりして過ごしていたことを思いだして納得した。