きみと真夜中をぬけて
「あら?蘭。今日はいつもより早いんじゃない?」
時刻は22時を回った頃。玄関で靴紐を結ぶ私に、ちょうどお風呂からあがった母が言った。
私がいつも外に出るのは23時基準だったので、たしかにいつもより30分ほどはやい。
日によって気持ち家を早く出る日もこれまでに何度かあったけれど、今日は無意識ではなく、意図的にだった。
「うん、ちょっとコンビニ寄ってくから」
「コンビニ?」
「……人の好きなものって、わかんないから。お菓子なら人間の8割は喜ぶ気がするっていう、自論」
「うーん?何の話なのかねぇ」
「いってきまーす」
母の声色から、にやにやしていることは何となく察したから、逃げるように家を出た。