きみと真夜中をぬけて
全ての商品のバーコードをかざし終えた店員さんが、ぱちぱちと目を瞬かせる私を余所に「お会計、1085円です」と告げる。
慌てて財布からお札を1枚取り出し、100円硬貨をトレイに乗せた。15円のお釣りを受け取り、財布にしまう。
───楽しそうっすよ、お客さん
その言葉の続きを言ってくれないから、どうしていいかわからずレジ袋にお菓子とジュースを詰める店員さんの指先をじいっと見つめる。
アイスをひとつ買うときはシールを貼ってもらうだけだったから見ることもなかったけれど、男の人の手って、こんなにごつごつしていて大きいんだなぁ。
思い返せば綺の手も、この店員さんと同じくらい綺麗で、ごつごつしていたような気もする。
「ありがとうございます」
全て詰め終わった袋を差し出され、「あ、ありがとうございます」とぎこちなく返す。
目が合った。その瞳からは、さっきの言葉の真意は読み取れない。
私がいつも深夜に来ることを認識していてくれたのか。
小説や漫画で常連という言葉をよく見かけるけれど、同じ原理で、私はこのコンビニの常連という扱いになっているのだろうか。