きみと真夜中をぬけて




「お客さんは、なんか大丈夫な気がします」

「…大丈夫、でしょうか」

「うん、多分、わかんねーけど。お客さん、もうこのコンビニ通って長いけど、そんなにいっぱいお菓子買ってるとこ見たことないっすもん。コーラ、缶で2本って、ウケますね」

「ウケますか」

「ウケますよ、ペットボトルじゃなくて缶て。しかも600ml。若いってやばいすね。夜、一緒に越えてくれる人に出会えたのかなって、レジにこのかご持ってきたときに思いました」





一緒に夜を越えてくれる人。

その言葉と同時に脳裏を過ぎるのは、


『よお、好きな人』


私に恋をしているらしい、綺の顔。




出会って11日。綺に会うことが、私の日々の日課になっている。



綺は最近 親の目を盗んで家を出るコツを完全にマスターしたらしい。

ドヤ顔で言うもんだから、私くらいになると笑顔で送り出されるようになんだよ と言ったら「そりゃ蘭は元祖徘徊少女じゃん」と笑われた。



褒め言葉なのかすら分からなくて、私も笑えた。



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