きみと真夜中をぬけて
「らーんー。冷蔵庫に入ってるコーラの600ml缶飲まないの?」
「んー、うーん…わかんない」
「えぇ?」
「あげようと思ってたけど、来ないから」
「だれが?」
「すごく名前が綺麗な菩薩が」
「ぼ…え、菩薩?友達じゃなくて?」
「んー……菩薩、だね、うん」
「ごめん蘭、ぜんぜん意味わからんのよ」
それから1週間が経ってもなお、綺が公園にくる気配はなかった。
私は綺と出会う前から深夜徘徊が日課になっていたから、変わらず毎日公園を訪れているものの、ふたりで超える夜を知ってからは、ひとりで過ごした一週間は夜がやけに長く感じていた。