きみと真夜中をぬけて





いちばん上にあったのは、レトロなさくらんぼ柄の封筒だった。


その下は空の写真のように見えるデザインの封筒。紙飛行機のイラストが印字された透明なシールで封がされている。さらにその下に行くと、向日葵が印象的な封筒や、ホログラム加工がされたものもあった。


そうして遡っていくと、いちばん古いものにたどり着いた。



淡い紫の、シンプルな封筒。

私宛てにそれが届くようになった、始まりの手紙。




〈名生蘭さまへ〉




良く整った、線が細い字だった。
封筒を握りしめ、懐かしい気持ちになる。



頭の中がいっぱいいっぱいで何も考えられなくなって、手紙を見ることすらしなかった。友達ではなかった、そう言い切り、消えてしまいたくなった。そんな、苦しい過去の記憶。



藤原 杏未。

封筒の裏側には、確かにその名が綴られている。



私たちは、本当に友達だったのか。

本当に、友達ではなかったのか。



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