きみと真夜中をぬけて
カーテンを閉めたままの部屋は、布を透かして入り込む光で充分明るかった。
あの子と夏を越えたのは、もう2年も前のこと。
最後に顔を見たのは去年の春。マイとシホの後ろで、彼女は俯いて震えていた。
淡い紫の封筒は、アジサイの花のシールで留められていた。震える指先で封を切り、1年以上、この封筒の中に閉じ込められていた3枚の便箋を取り出した。
───蘭ちゃんへ
直接伝える勇気がなくて文字に頼ったことを、どうか許してください。
始まりはそう書かれていた。0.38mmのボールペンで、一文字一文字丁寧に書かれたそれを、時々とどまりながら、私は時間をかけて最後まで読んだ。
朝の光が差し込む中、私はひとり、声を殺して泣いた。