鶴の音返し
セットアップが完了すると、
チラッと私に目をやり、
そのまま手をギターの弦へ滑らせた。

杞憂だったようだ!

ちゃんと彼の音が届く。

優しくも激しいギターの音色、
鋭くも温かい声、
合間合間の息遣い、
それら全てがしっかりと私に届いている。

身体中の血液が2倍速で駆け巡っているせいで全身が熱い。

うわぁ、本当にすごい!!

見事、音の魔法にかけられた私の目頭から一滴の喜びが。

と、彼に見られる前に慌てて指で拭った。
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