鶴の音返し
視線を親御さんに移した先生は、
一つ大きく深呼吸をして説明を始めた。

「まず娘さんに外傷は全くありません。」

それを聞いた両親は溜めてた息を全て吐いた。

「電話ではかなり出血してると聞きましたが、
それではどうして娘は倒れたのですか?」

鋭い目付きで、
お前だろ、
と言わんばかりに元凶であろう男に圧を飛ばす。

「彼は高校3年生なのですが、
偶然教室の前を通りがかったところ、
ハサミを持って喧嘩している生徒がいて、
先輩としてそれを止めに入ったら
彼の手にハサミが刺さってしまい、
その時の血液が娘さんにかかり
ショックで気を失ってしまったようです。」

それを聞いた両親の頭に過ぎったのは、
彼がいじめの主犯で、
勢い余ってハサミで刺そうとしたが
もみ合ってるうちに自分の手に刺さったのでは、
という想像であった。
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