訳あり無表情少女と一途な旦那 〜異世界編〜
〔ほう、生きておる者がいるか〕
「!?」
どこからか聞こえてくる声
〔しかも、祠を穢れた血で汚しおって〕
正体が分からない声に、恐怖で体がガタッガタッと震える
「お、お…前…は、誰…だ…っ」
〔ふん、人間如きが…
我の声を耳にしているだけでその震え様
姿を現した時、正気を保っていられるとは思わんな〕
見下した言い方
僕は腹が立ち、手をギュッと握る
「みくびるな!僕はこの国!ズメイ国の王子だぞ!
お前如きにこれ以上の失態は見せない!
さっさと姿を見せろ!」
〔ふん ならば言葉通りにしてやる〕
すると
水晶から白い光が溢れ、祠が光で埋め尽くされていく
「な、何だ、コレは!?おい!何をしてる!?」
〔黙っておれ〕
瞬間
祠が爆発し、風圧で外に吹き飛ばされる
「ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!…っ、一体、何が…」
顔を上げ、祠があった場所を見ると
「!?」
そこには1匹の
「ドッ!?ドラ…ゴ…ンッ!?」
青色の目に白い鱗、体全体が…白い光で覆われてる
だが、それ以前に
「この地に居たドラゴンは、ずっと昔に…死んだ筈じゃ…」
御伽噺にあった
人間を襲ったドラゴンは、深傷を負って死んだと
〔その原因が何か、知っておるか?〕
「え、…人間を襲った時に、深傷を負ったからって…」
〔ふん 都合の良い様に語り継ぎおって…、これだから人間は穢れておる〕
「なっ…どういう事だっ…!?」
〔少しは己で考えたらどうだ〕
「なにぃっ…!」
〔我は襲ってなどおらぬ
人間が、我を襲ったのだ…
お主等人間は卑劣な手段を用いた、穢れた種族なのだ〕
「卑劣な…手段…?お前だって…、そうじゃないか
お前も!僕の友達を殺したっ!卑劣なやり方で!
お前が殺した!」
〔今まで殺めた者は、欲深き人間のみだ
貴様の友というのは、我の祠を汚した血の者共だな?
1人は何か目ぼしい物はないかと欲を出し
もう1人も水晶を持って帰ると欲を出した…、過去の者共も同様だ〕
「…っ」
こんな恐ろしいドラゴンがっ…!
こんな近くに居たなんて…っ!!
御伽噺の、森の奥には入ってはいけないって…っ
「まさか、こんなの…、ただの作り話じゃ…」
〔遥か昔に1人だけ森から抜け出しておったのに…
それを作り話とは、滑稽な話だ〕
「…え」
ちょっと待って