訳あり無表情少女と一途な旦那 〜異世界編〜
「…ねぇ」

姉さんがドラゴンに顔を向ける

「名前を知りたかったら、証明しろって言ったよね?
 今の状況が、証明にならない?」
〔…この状況で、その話をする余裕があるか?〕
「…なら、時間を止める」

姉さんが檻に触れ

「蓮、紫音」

俺達が姉さんの肩に触れると
一瞬で空間が変わる

〔…ここは〕
「私が作った異空間
 ここに居る間、現実世界では時間が進まないの」
〔左様か…〕
「…それで
 貴方の名前は、教えてくれるの?」
〔……、良かろう〕

ドラゴンが少しだけ、笑ってる気がする

〔其方等に、我の名を教えよう〕

すると
檻が光の粒となって消えていく
全部が消えると
ドラゴンはゆっくりと首を上げ、体を起こし始める
徐々に目の前で大きくなっていく体
思ってたよりも遥かに大きい…っ
ドラゴンは完全に起き上がると、翼をバサッ!と大きく広げる
目の前の、存在するだけで圧倒される感覚…っ
羽ばたきと同時に、ドラゴンが白い光で覆われる

〔名を教えるのはいいが…、今の我にはアレを退ける程の力が無い
 この状況をどうする?〕
「それは私が何とかする
 それと…、貴方は自由になった今、帰る所はあるの?」
〔無い 元より、帰る場所など持っておらぬ〕
「そっか…
 あの…、良かったら、私達と来ない?」
〔《!?》〕
「私には治癒能力があるの
 貴方がラルフ達の様に私の中に入れれば、回復が早いと思う」
〔我を、その身に宿すと?〕
「うん」
〔体がどうなるか分からんぞ…〕
「きっと大丈夫。それに…」

姉さんはドラゴンに微笑み

「一緒に来てくれれば、もう…ひとりじゃないよ」
〔…〕
「周りには、こんなにも家族がいるから」

レノ達…精霊も出てくる

〔かぞく?〕
「そう、家族。いつでも…、いつまでも一緒にいる人達の事」

ドラゴンは目を細め

〔…良かろう。行こう、其方達と共に

 我の名は…〕
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