訳あり無表情少女と一途な旦那 〜異世界編〜
目を開ければ
視界には、見慣れた自室の天井が
「…、帰ってきてる?」
「栞」
声の方を向けば、蓮が
「姉さん」
反対側には紫音が
それぞれの肩にフェニアとジルが
〔お目覚めになりましたか!〕
〔我が主!〕
顔の横に子犬サイズのラルフ
紫音の隣にレノが
皆がいる
「…何日、経った?」
「ゼルファと会ったのが昨日、今は夜だ」
「…、どうやって帰ってこれたの?」
〔我だ〕
蓮の後ろからもう1人
そこには…
「……、え」
白色の髪に青色の目、頭に2本のツノが
「…、まさか、ゼルファ?」
ゼルファがニッと口角を上げれば牙が
〔左様だ〕
「…」
まだ1日しか経ってないのに
「…、もう回復したの?」
〔うむ〕
蓮が溜息を吐き
「あの後、少しだけ力があったゼルファがここまで皆を《テレポート》したんだ
数時間後には回復して、お前の中から出てこようとしたけど
ここであの姿はマズイって事で人型になってもらったんだ」
〔ほれ、尻尾もあるぞ?〕
ゼルファの後ろで尻尾がフリフリと動いてる
〔出し入れ可能だ、翼もな〕
「そうなんだ…」
…っていうか
「回復するの、早くない?」
〔それは我も想定外だ〕
ゼルファが真面目な表情に
〔人間がドラゴンを宿すなど、過去にも無い事
故にお主の身に何が起こるか、我も分からなかった…
だが、お主は一時的な痛みと意識を失っただけで済み
我もこんなに早くに回復した〕
「…」
〔シオリ、今はどこにも痛みは無いのか?〕
「何も…」
〔そうか…
まあ我も回復し、お主も無事に目覚めた
今はソレを喜ぼうぞ〕
「…うん」
「問題は、アイツだね」
紫音が顔を顰める
「アル、アイツはゼルファを殺そうとしてるけど
最後に言ってた…
ゼルファの前に姉さんを殺すって」
紫音と目が合う
「姉さんが狙われてる」
「大丈夫」
「え?」
「私には皆がいるから」
レノがニコッと微笑む
〔そうですね
我々のお互いを信じる気持ち、何があろうと諦めない気持ちがあれば
光は消えません
皆がいるからこそ、闇に打ち勝てるのです〕