訳あり無表情少女と一途な旦那 〜異世界編〜
紫音side
皆と話してると、離れてる席で複数人が姉さんをジッと見てる
でもそれは、良い視線なんかじゃない…
疑ってる様な…、警戒してる様な視線だ
ムカつくけど、誰にだって仲良く出来ない人はいる
姉さんも視線には気付いてるだろうけど、気にしてないし
だから俺も、気になるけど何もしない
俺が何かして姉さんに変な言い掛かり付けられても嫌だしね

もう少しで日が暮れるな、周りは帰り支度をしてる
俺と蓮も姉さんに近寄り

「そろそろ帰る?」
「ん」
「帰るかぁ」

ギルドを出て、市場で食材の買い足しをして
少し離れてる森の中に
進んでいけば、そこそこ大きなツリーハウスが
ここが俺達の新居だ

ステータスカードを貰った日に、ミルデさんに住める処も聞いたところ
ここを紹介された
昔、どこかの金持ちが別荘として建てたらしいけど
思った以上に夜の動物の鳴き声が煩かったらしく
こんなとこで寝れるかっ!って怒ったらしい…
取り壊すにも費用が掛かり、別荘として管理するのも面倒くさがって
結局そのまま放置したそうだ
ただ…、いつまででも新築同様にと
年月がいくら経とうが、人の手を加えずとも朽ちる事が無い様にと魔法が掛かってるらしい
その金持ちはもう亡くなってるし、ご家族からも好きに使ってくれとの事だ

正直、とても助かってる
必要な家具は揃ってるし、部屋が沢山ある
夜の動物の鳴き声は、何もしなくても解決した
何でも、ゼルファとラルフの気配で大人しくなってるらしい
ここなら人ともあまり出会わないし、何より静かで心地良い

そして
自然に囲まれてる場所で心が落ち着いてれば
仮面を取っても大丈夫だとゼルファが言ったから
だから…、ここは姉さんにとって心から安らげる場所になってる
俺と蓮は、その事に心から安堵した


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