誘惑の延長線上、君を囲う。
「うん。あと、美大目指す事にしたって伝えて」

「そうなのか?デザイン系の専門学校ではなくて?」

「美大に行けば、進路先に幅が出ると思って」

「分かった。父さん達にもきちんと話せよ」

二人だけの会話だから、私は余計な事も言わずに黙って聞いている。陽翔君は美大を目指しているのか。顔は似ていても、やはり、中身は別人で、それぞれの得意分野や興味が違うらしい。……けれども、日下部君も雑貨を扱う仕事をしているから、全く興味がない訳でもなさそうだな。

日下部君と再開してから、目の前に広がっていく景色が目まぐるしい程に変化していく。仕事も、人の繋がりも、そしてその関係性も。

夕飯を食べ終えて、陽翔君と日下部君は再び、ゲームを始めた。自分用の買い置きのアイスを陽翔君に渡すと、すんなりと受け取って、ペコッとかるく頭を下げた。嬉しそうにアイスを頬張る陽翔君が可愛らしい。高校生って、無邪気な子供だな。

陽翔君に高校時代の日下部君の面影を探しながら、私はキッチンで片付けをしていた。その後に二人をそれぞれに浴室に送り出し、二人の入浴後に私もようやく入浴した。
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