誘惑の延長線上、君を囲う。
澪子ちゃんはフレンドリーなタイプで、ぐいぐい押してくる。日下部君とは高校の同級生で、たまたまここの採用募集を見て応募したら、上司が日下部君だったと澪子ちゃんに伝えた。

「うるさいぞ、お前ら」

コツン。拳で軽く叩かれたたと思ったら、日下部君だった。日下部君は私の隣の席が空いていたので、椅子を引き、勝手に座る。

「あっ、日下部君!私ね、琴葉ちゃんと仲良くなったんだ」

「うわー、小嶋と仲良くしたらノンストップで話を聞かされて大変だぞ!特に酔うと最強だし……」

「酷い!同期なのに、もっと優しく扱ってよね」

しれっと言う日下部君に対して、澪子ちゃんも負けてはいない。

「そうそう、日下部君って、ずうっと紫ちゃんに片思いしてたよね?日下部君って、学生時代も奥手だったの?」

「……な、何言ってんだよ、小嶋!」

「だって、バレバレだよ。生き残っている同期の中では日下部君と紫ちゃんがくっつくと思ってたんだからね。あんなに仲が良かったんだから、何かあるよね?って皆が思ってたよ」

「そんな話、今しなくても……」
< 122 / 180 >

この作品をシェア

pagetop