誘惑の延長線上、君を囲う。
”そいつがまた可愛くて骨抜き状態”という嬉しい言葉の余韻に浸れないまま、二人の会話は進んで行く。澪子ちゃんを宥める為の言葉なのかもしれないが、気分は最高潮になった。

「小嶋に心配されなくても、大丈夫だから。ちゃんと前に進んでるから」

澪子ちゃんは居候が完全に猫ちゃんか犬ちゃんだと思っているみたいだった。日下部君は秋葉さんに振られた事になっているから、フリーとしか見られてないんだ。

「それなら良いけどね。日下部君もボケッとしてるとあっという間に婚期逃すからね。気をつけないと!」

「はいはい、分かりました!」

日下部君は不貞腐れたように答えるとチラリと私の方を向いた。突如として目が合ったので、ドキッと胸が高鳴る。

何度も肌を重ねても、職場で目が合うのはドキドキしちゃう。プライベートと職場では全くと言って良い程に距離感も違うし、同級生ではあるけれど、上司と部下の関係だから秘密の恋愛をしているみたいだ。実際、両思いではなくても、誰にも内緒の関係だから秘密の恋愛には変わりないのかもしれないけれど……。
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