誘惑の延長線上、君を囲う。
女子会で秋葉さんには、日下部君との馴れ初めではなく、婚約者の副社長の馴れ初めを聞いてみたい。秋葉さんが日下部君を恋人としての好きじゃないのは分かってるのに、胸が苦しい。日下部君の気持ちが分かっているから、二人を見ていると辛い。

私と日下部君だって充分に仲が良いけれど……ヤキモチからなのか、二人は私達以上の関係に見えてしまう。どうしたら、この気持ちが消滅してくれるのだろうか?何度、唇を重ねても、身体を重ねても消えないわだかまり。

「委員長が本音で言ってるとは思えないんだけど?俺と秋葉の事を小嶋から聞いてどう思った?」

下を向いていた私に問いかけて、顎を上向きにさせた。真剣な眼差しをした日下部君は私の事をじっと見ている。視線に耐えられずに、助手席側の窓を見ようとする。

どう思った?って、そんなのは不愉快でしか無かった。真実を知りたいけれど、聞いてしまったら、もっともっと臆病になる。真実を知りたいけれど……、本当は怖い。

それにどう思った?なんて聞き方に対して、どう答えたら良いのか分からない。

「日下部君は、それを聞いて何が知りたいの?どうしたいの?」

質問に質問で返す事にした。日下部君が困ると思って、視線を合わせながら。私ばかり、一喜一憂してるのは性にあわない。だから、形勢逆転のチャンスを狙いたい。じいっと食い入るように日下部君を見つめて、答えを待つ。

「相変わらず、委員長には負けるよ」

答えたく無かったのか、日下部君は誤魔化すように唇を重ねた。誰も居ない、駐車場で二人、濃厚なキスを交わす。お互いに言いたくない時は誤魔化せば良い。本当の恋人じゃないんだから──
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