誘惑の延長線上、君を囲う。
『またね』と言って伊能さんと駅で別れてから、電車の中で考える。離された手の感触が日下部君とは異なる。そんなの当たり前なのに、違いを比較してしまう私がいる。
私の脳裏に侵食している気持ちが消えない限りは、誰と付き合っても上手くはいかないのだろう。……けれども、日下部君を忘れる為には新たな一歩を踏み出す事以外の改善策は無いに等しい。
マンション付近になり、日下部君に『もうすぐ着くよ』とメッセージを送信した。直ぐに既読になった。近くのコンビニで日下部君の夕飯とビールを購入する。重い足取りでマンションの玄関前まで着き、深呼吸してからドアを開けた。
「ただ、いま……」
マンションのドアを開けるなり、待ち構えていたかのように日下部君が立っていた。玄関先に荷物を置いてヒールを脱ぐ。歩き疲れた足が解放感されてリビングに向かおうとした瞬間に、日下部君の腕に絡め取られて身動きが取れなくなった。
「おかえり。遅かったから心配だった。帰って来ないかと思った……!」
ぎゅうっと力強く抱きしめられて、冷え切った身体が少しだけ温まった気がする。
「ちゃんと帰って来るよ。私の居場所はココしか無いんだから」
私の脳裏に侵食している気持ちが消えない限りは、誰と付き合っても上手くはいかないのだろう。……けれども、日下部君を忘れる為には新たな一歩を踏み出す事以外の改善策は無いに等しい。
マンション付近になり、日下部君に『もうすぐ着くよ』とメッセージを送信した。直ぐに既読になった。近くのコンビニで日下部君の夕飯とビールを購入する。重い足取りでマンションの玄関前まで着き、深呼吸してからドアを開けた。
「ただ、いま……」
マンションのドアを開けるなり、待ち構えていたかのように日下部君が立っていた。玄関先に荷物を置いてヒールを脱ぐ。歩き疲れた足が解放感されてリビングに向かおうとした瞬間に、日下部君の腕に絡め取られて身動きが取れなくなった。
「おかえり。遅かったから心配だった。帰って来ないかと思った……!」
ぎゅうっと力強く抱きしめられて、冷え切った身体が少しだけ温まった気がする。
「ちゃんと帰って来るよ。私の居場所はココしか無いんだから」