誘惑の延長線上、君を囲う。
「こないだだって人肌が恋しいから私が誘っただけなんだし、日下部君はそれに応じてくれただけ。今日だって……寂しいから着いてきちゃっただけなの。自分でも迷惑な奴だなって思ってるよ。

友達は皆、彼氏が居たり、結婚して子供が居たりするのに……私は一人ぼっち。夜、帰って来ても誰も居ないんだもん、寂しいよね……」

「帰って来ても一人だから、俺だって同じだよ」

私はそっと肩を抱かれ、コツンと私の頭と日下部君の頭がぶつかる。子供を落ち着かせるみたいに頭を撫でられ、「よしよし」と言われた。

「と、友達には……こ、んな事しないでしょ?」

「だって、佐藤的には元の友達には戻れないんだったら、別に良いんじゃない?寂しくなくなるまで隣に居るよ」

心臓に悪い。艶のある流し目も行動も言動も、全て。いつの日か、日下部君の彼女になる人はこんなにも甘さを与えられるんだ。羨ましいけれど、心臓が持たなそうだ。

「も、もう寂しくないからっ、大丈夫。……仕事だからそろそろ寝よう」

「逆に……俺が寂しいって言ったら?慰めてくれないの?」

私は立ち上がり洗面所に行こうとした所を腕を掴まれ、引き止められてソファーに逆戻り。再び、隣に座る事になった。

「……日下部君が嫌じゃなかったら、いいよ。……しよ?」

慰めるって身体を重ねる事だよね?もうどうにでもなれ、と私は冷静さを失い、スルりとハーフパンツを脱ぎ、次にパーカーを脱ごうとした時に日下部君に止められた。

「いや、そうじゃなくて……、ただ抱きしめさせて」

……ん?私はとんでもない勘違いをしてしまった。こないだみたいに抱き合うのかとばかり思っていたから、つい脱いでしまった。馬鹿じゃないの、私!日下部君も私の生脚が出た状態では、目のやり場に困っているし、収拾がつかなくなっている。そっと手を伸ばされ、ぎゅっと力強く抱きしめられる。

「佐藤……、それはちょっと可愛過ぎて……ヤバい」

日下部君に抱きしめられている私は、そんな少女漫画みたいな台詞に一喜一憂する。
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