誘惑の延長線上、君を囲う。
「いや、俺も悪かった……って、この体制……、朝からまずいでしょう…」

「わぁ、い、今、離れるからね……!」

日下部君は足を開いていて椅子に座っている。その隙間に私の右足の膝を乗せてしまい、日下部君の顔の目の前に胸があるという体制になっていた。偶然だとしても、何とも言えずに恥ずかしく、顔に火がついたみたいに真っ赤になった。

同時に昨夜の自分自身が主導権を握って、日下部君の上に股がると言う行為についても思い出してしまい、顔を隠すように後ろを向いた。行為中は無我夢中だったから、さほど気にならなったけれど、振り返ればめちゃくちゃいやらしいわ……。

「……佐藤、バイトの子が来るまで1時間寝かせて。起きたら、データ管理とかの仕事するから」

日下部君は椅子を二脚連ねて、一脚は背もたれに頭を預けて、もう一脚の方に足を伸ばして寝るらしい。

「うわー、職権乱用、いけないんだ!」

「今日だけだよ。だいたい誰のせいで寝不足なんだよ?」

「そ、そんなの……お互い様でしょう?」
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