誘惑の延長線上、君を囲う。
「朝食だけ作りに行くのは私がめんどくさいでしょう!だから、嫌です」

朝食を作りに行きたいのは山々だけれど、鵜呑みにして朝食だけを作りに行くのは私にはデメリットしかない。そんな事をしたら、私が好きなのがバレバレじゃないの!

「……じゃあ、一緒に住む?俺の部屋は一部屋余ってるし」

私は開いた口が塞がらなかった。突然、何を言い出すのかと思ったら、一緒に住もうだなんて。日下部君は私を見つめたまま、頬を軽くつねって来た。

「な、何言ってるの、日下部君!……総務にも住所登録しちゃったし、同じ住所とかはマズイと思……」

「総務には高橋が居るし、全国の色んな店舗の個人情報を一括で管理してるんだから、分かりやしないよ。それともバレたら何かマズイの?」

「バレたら何かマズイのは日下部君じゃないの?……同級生だけど、私の上司なんだし、それにそれに……私達は付き合ってもいないし……」

「んー、佐藤が思ってる程、俺達の事なんて誰も気にしてないよ」

頭をグリグリと撫で回されて、髪の毛が乱れた。私は乱れた髪を手ぐしで整えながら、日下部君に問いかける。
< 48 / 180 >

この作品をシェア

pagetop