誘惑の延長線上、君を囲う。
「だいたい日下部君は使いもしないのに何で2LDKに住んでるの?一部屋で良かったじゃん」

日下部君の自宅は2LDKの賃貸マンション。一部屋は何もなく空き部屋になっている。

「あぁー、そんな事。たまに弟が泊まりに来る時があったし、同僚が飲みに来た時に泊まったリしてたから。それにマンションの方がセキュリティしっかりしてるしな。ただ、それだけの理由」

「弟君はともかく、同僚って……女の子?」

「気になる……?」

私の事を簡単に泊めたのだから、他の女の子も泊めているかもしれない。日下部君に限って、そんな事はないと思うが疑いの目を向けたが、私の事を見ては視線を逸らさない。

「べ、別に気にならない……!」

くるり、と後ろを向き、日下部君から離れる。日下部君はクスクスと笑っているが、私は見つめられると居ても立っても居られない程に身体が反応する。身体中から湯気が出そう。日下部君はベッドの中でも日常でも、Sっ気があるくせに甘やかしもする。私には手に負えないかもしれない。

「佐藤……、佐藤 琴葉さん。そろそろ、バイトの子が来る時間だから返事聞かせて下さい」

「は?」

「いや、だから……返事聞かせて。一緒に住む?」

店舗のオープン時間になり、先程は返事をうやむやにしたまま、私はお客様の接客をしたりしていた。お客様が途切れた時に日下部君は再び、私を構い出す。

先程の話は本気だったのか?
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