誘惑の延長線上、君を囲う。
一番近い駅まで歩き、次の目的地を考える。今日のお出かけは行き当たりばったりのノープラン。

「夕食は私が行きたい場所でも良い?」

「うん。佐藤が好きな場所に行こう」

最初で最後かもしれない、恋人みたいなデートだからこそ、思う存分に楽しみたい。一度行ってみたかったんだ、大切な人と一緒に夜景の見えるレストランに。ムーディな雰囲気にカクテルなんか飲んで、語り合いたい。

私はスマホから良さげな場所を探し出し、当日予約を入れた。なるべく自宅に帰りやすい場所で夜景の綺麗な食事の評価も高いレストラン。

「佐藤、危ない!……良かった、落ちなくて」

駅の階段を登っていると上から降りてきた人が私に衝突しそうになった。日下部君が咄嗟に私の肩を抱き寄せてくれたから助かった。日下部君とのお出かけに舞い上がり過ぎていて、私の注意力も散乱している。勢いよく降りてきたので、日下部君が居なければ落ちて居たかもしれないと思うとゾッとした。

「ありがとう……」

「ほら、危ないから。歩く時は繋いでな」

「……うん」
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