ストーリー
希子は今小さな企業で経理事務の仕事をしている。
「今使ってるやつ、あまり座り心地が良くなかったからすごく嬉しい。早速戻ったら使うね」
「ねーちゃん、仕事は順調なの?」
今日は六月十四日。就職してから一年とちょっと経った頃。部署は違うが後輩も一人入社した。
「ねーちゃん出来る人だから仕事は全く問題ない」
そう言ってニカッと歯を見せて笑う希子。でもね…と続ける。
「彼氏欲しいかな~」
包装紙を丁寧にたたみながら新しいクッションに頬ずりをしている。
豚の角煮を崩しながら父親が不貞腐れたように声を出した。
「一人暮らしを始めてからまだ一年だぞ。今はまだそんなことを考えている時じゃないだろう」
「あら、今から考えて探しておかないと今の時代取り残されちゃうわよ」
「さすがお母さん、話が通じる」
希子はもらったクッションをお尻の下に敷いて海苔を一枚手に取った。
今日の晩御飯は手巻き寿司と希子の好物の豚の角煮だ。
満は手巻き寿司片手に姉が吞むビールを羨ましそうに眺めながらコーラを飲み、父親はマグロをつまみに晩酌をしている。