ストーリー
「コーヒー飲む?」
キッチンにいる一樹が希子に声をかける。
希子は引っ越しをした。少しだけ広い部屋を借りて一樹と一緒に暮らしている。
「飲む!」
決して新しいアパートではないが最近リフォームされたこともあって新築のような白い壁紙が太陽の光を淡く反射している。
希子はB5の用紙数枚を丁寧に重ね合わせている。
整えたそれをテーブルの上に置いた。
「できたの?」
マグカップに入ったコーヒーをテーブルの上に置いて一樹が声をかける。
軽く希子の頭を撫でて頬にキスをした。
白かった太陽の光がほんのりオレンジがかってきた時間、希子は初めての絵本を完成させたところだった。
どこかの出版社に持ち込むわけでもない、近所の子供に読み聞かせる予定も無い。それでも作りたいと思った気持ちは押し込めたくなかった。