犬猿上司に溺愛されてます
月末の週末金曜日。

経理部のオフィスは戦場と化していた。

あちこちで人が行き交い、声が飛び交う。

木崎 若葉(きざき わかば)もその真っ只中にいた。

入社6年目の28歳。

総務部から経理部に異動して3年。

繁忙期の忙しさにもすっかり慣れた若葉は、端末に入力しながら、かかってきた電話に出る。

「はい。経理部、木崎です」

しばらくして通話を終えた若葉は、長い黒髪を一つに束ねると、近くにいた同僚に声をかけて席を立った。

向かう先は営業統括本部。

先程の電話の相手である営業事務のもとへ駆け寄る。

「書類、見つかりました？」

若葉の問いに、営業事務は申し訳なさそうに首を左右に振る。

若葉は苦笑いを浮かべて、営業統括本部の奥のデスクに視線を向ける。

デスクの上には書類の束やファイルが山積みされていて、若葉はガックリと肩を落とす。

見慣れた光景とはいえ、これからあの中から探し物をしないといけないと思うとうんざりする。

けれど、これも仕事。

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