大和の風を感じて 【外伝 】
それから2週間程して、いよいよ吉備の海部からの訪問者が来る日になった。
瑞歯別皇子の宮にずらずらと訪問者達がやって来た。人数にすると20名程だろうか。
そんな中、宮の女達から色めいた声が聞こえて来た。
どうやらその訪問者の中に、1人とても凛々しい青年がいたようだ。
訪問者一行は、早速瑞歯別皇子に挨拶する為、部屋の中に案内された。
そして暫くして、瑞歯別皇子が家臣を連れて部屋の中に入って来た。
皇子は訪問者の前に座ると、自分の前に座っている者を見た。
(うん?意外に若いな。俺と同じぐらいか)
皇子の前にはとても凛々しい顔立ちの青年が座っていた。
顔は少し日焼けしているが、とても健康そうな肉体で、背筋もしっかりと伸びていた。
先ほど宮の女達から、色めきの声が上がっていた理由はきっとこの青年だろう。
「この度は、ようこそお越し下さった。この宮の瑞歯別と申す」
それを聞いた青年は、続けて自分の名前を名乗った。
「瑞歯別皇子に置かれましては、初めてお会いします。私は吉備国海部の乙日根の代理で来ました、名を阿止里と申します」
そう言って彼は頭を深々と、瑞歯別皇子に下げた。
(何、阿止里だと。こ、こいつが!)
思わず瑞歯別皇子に動揺が走った。
阿止里とは佐由良と同じ乙日根の孫にあたる青年だと、以前彼女から聞かされていた。
「よし、分かった。一旦顔を上げないか」
そう王子に言われて、阿止里は顔を上げた。
(こいつが、佐由良の言っていた阿止里か。しかもこれだけの好青年となれば...)
「とても若そうだな。俺と同じぐらいに見える。歳はいくつだ」
「はい、今は17歳です」
やはりなと瑞歯別皇子は思った。17歳と言う事は自分と同じ歳だ。
その歳でこうやって代理で来るとは、さすが乙日根の後継者と言われるだけの事はありそうだ。
「そうか、では俺とは同じ歳だな。確かそなたは乙日根の孫で、彼の後継者にと考えられてると聞いていたが」
「え、皇子。どうしてその事を?」
そんな族内の話しが、ここ大和にも伝わっていた事に彼はかなり驚いた。
今まで吉備と大和はそれなりに交流は続けて来たが、頻繁に使者を使わす事はしてなかった。
「あぁ、済まない。佐由良から前に少し聞いていたんだ。彼女は今この宮に采女として仕えてるからな」
それを聞いた途端、それまでとても落ち着いた雰囲気でいた阿止里の表情が変わった。
「え、佐由良が俺の事を話していたんですか!」
彼は思わず、食って掛かりそうな勢いで、瑞歯別皇子に言った。
かなり動揺しているようにも見えた。
(何だ、コイツ。佐由良の名前を出しただけで)
「あぁ、前に少し聞いてだけだ」
瑞歯別皇子にそう言われて、彼もすぐにハッとなり、そのまま身を戻した。
「皇子、申し訳ありません。佐由良の名前が出たのでつい……彼女はその、元気にされてますか」
どうも阿止里は佐由良の事が気になってるようだ。
「あぁ、元気にこの宮に仕えて働いている」
それを聞いた阿止里は「そうですか。それは本当に良かった」と言った。
彼はとても嬉しそうで、先程までの凛々しい感じが崩れ、年相応の青年に見えた。
またそこには何か彼の秘めた思いがあるとも感じ取れた。
瑞歯別皇子の宮にずらずらと訪問者達がやって来た。人数にすると20名程だろうか。
そんな中、宮の女達から色めいた声が聞こえて来た。
どうやらその訪問者の中に、1人とても凛々しい青年がいたようだ。
訪問者一行は、早速瑞歯別皇子に挨拶する為、部屋の中に案内された。
そして暫くして、瑞歯別皇子が家臣を連れて部屋の中に入って来た。
皇子は訪問者の前に座ると、自分の前に座っている者を見た。
(うん?意外に若いな。俺と同じぐらいか)
皇子の前にはとても凛々しい顔立ちの青年が座っていた。
顔は少し日焼けしているが、とても健康そうな肉体で、背筋もしっかりと伸びていた。
先ほど宮の女達から、色めきの声が上がっていた理由はきっとこの青年だろう。
「この度は、ようこそお越し下さった。この宮の瑞歯別と申す」
それを聞いた青年は、続けて自分の名前を名乗った。
「瑞歯別皇子に置かれましては、初めてお会いします。私は吉備国海部の乙日根の代理で来ました、名を阿止里と申します」
そう言って彼は頭を深々と、瑞歯別皇子に下げた。
(何、阿止里だと。こ、こいつが!)
思わず瑞歯別皇子に動揺が走った。
阿止里とは佐由良と同じ乙日根の孫にあたる青年だと、以前彼女から聞かされていた。
「よし、分かった。一旦顔を上げないか」
そう王子に言われて、阿止里は顔を上げた。
(こいつが、佐由良の言っていた阿止里か。しかもこれだけの好青年となれば...)
「とても若そうだな。俺と同じぐらいに見える。歳はいくつだ」
「はい、今は17歳です」
やはりなと瑞歯別皇子は思った。17歳と言う事は自分と同じ歳だ。
その歳でこうやって代理で来るとは、さすが乙日根の後継者と言われるだけの事はありそうだ。
「そうか、では俺とは同じ歳だな。確かそなたは乙日根の孫で、彼の後継者にと考えられてると聞いていたが」
「え、皇子。どうしてその事を?」
そんな族内の話しが、ここ大和にも伝わっていた事に彼はかなり驚いた。
今まで吉備と大和はそれなりに交流は続けて来たが、頻繁に使者を使わす事はしてなかった。
「あぁ、済まない。佐由良から前に少し聞いていたんだ。彼女は今この宮に采女として仕えてるからな」
それを聞いた途端、それまでとても落ち着いた雰囲気でいた阿止里の表情が変わった。
「え、佐由良が俺の事を話していたんですか!」
彼は思わず、食って掛かりそうな勢いで、瑞歯別皇子に言った。
かなり動揺しているようにも見えた。
(何だ、コイツ。佐由良の名前を出しただけで)
「あぁ、前に少し聞いてだけだ」
瑞歯別皇子にそう言われて、彼もすぐにハッとなり、そのまま身を戻した。
「皇子、申し訳ありません。佐由良の名前が出たのでつい……彼女はその、元気にされてますか」
どうも阿止里は佐由良の事が気になってるようだ。
「あぁ、元気にこの宮に仕えて働いている」
それを聞いた阿止里は「そうですか。それは本当に良かった」と言った。
彼はとても嬉しそうで、先程までの凛々しい感じが崩れ、年相応の青年に見えた。
またそこには何か彼の秘めた思いがあるとも感じ取れた。