嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
「えっ……」

あの仲が良かったときが、今は私を憎いという顔をしている。

「いつもそうだった。つきは、私の欲しい物、全部先に奪って行った。」

「そんな事は……」

ときに手を伸ばすと、手を振り払われた。

「つき、知ってた?私達、みなしごだったって。」

「みなしご⁉」


どう言う事?私は、お父様とお母様の子供じゃないの!?

「産まれたばかりの私達は、誰かに引き取られる事になった。そこで豪族に引き取られたのがつきで、農民に引き取られたのが、私よ!」

あまりの事に、頭の中に入って来ない。

「どうして!?つきだけ、いいところを持って行って!許さないから!」

「あっ、とき!」

ときは、あっという間に、走り去ってしまった。

茫然とする私は、しばらく何も言えなかった。


どのくらい、時間が経っただろうか。

お母様に夕食だよと声を掛けられるまで、私はぼーっとしていたのだと思う。

「つき、つき。早く来なさい。」

行かなければならないのに、身体が動かない。
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