嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
「お母様。一つ聞いてもいい?」

「なあに?」

「私とときが、みなしごだったって、本当?」

お母様は、えっ?という顔をした。

「お願い、本当の事を教えて。」

するとお母様は、小さくため息をついた。


「こんな話をする日が来るなんて、思わなかったわ。」

お母様は、私の隣に座ると、つきを見上げた。

「こんな綺麗なお月様が出ている時だったわ。森の中で、人殺しがあってね。あなたとときの両親は、無残に殺されていた。」

「うそ……」

「お姫様の腕の中にいたのがつきで、お付きの家族の腕の中にいたのがときだった。私達は、つき、おまえを引き取って育てた。」

本当の話だったんだ。

ときの話は。

「でも、私達は一度だって、あなたを私達の子供じゃないと思った事はないわ。」

「お母様。」

私は、お母様の胸の中に、身体を寄せた。


とき。

いつも私を羨ましいと言っていたとき。

姉妹のように、一緒に育ったとき。

どうすれば、ときと仲直りできるのだろう。
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