嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
「私は、元の世界に無事戻って来れました。」

それも、るか様のお陰。

「はやてとも、再会しました。」

はやては、生贄になった私を、変らずに愛してくれていた。

「でも、正直。るか様に会いたいです。」

私の心の中には、るか様がいる。

「だって、私の好きな人は……」


その時、後ろから視線を感じた。

村人の誰か?

私が後ろを振り向くと、そこには目を疑う人がいた。

「るか様……」

「久しぶりだな、つき。」

お社の中にいるはずのるか様が、今、湖の側に立っているのだ。

「どうして……」

「そなたが、お社の側にいると気づいて、会いたくなった。」

その言葉に、ウルッとくる。

会いたいと思ってくれたのは、るか様も一緒なんだ。


「どうだ?元の世界は。幸せか?」

「……幸せじゃありません。」

だって、この世界には、るか様がいない。

その事に、今更気づいた私。
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