嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
「それは、我も悲しい。」

「るか様……」

あの寂しげな表情のるか様が、懐かしい。


「どうしてか、理由を聞かせてくれ。」

るか様が、私の目の前に来た。

「村人は、私が助かったせいで、干ばつが直らないと思っています。」

「なんと。そなたのせいではないのに。」

「そして、また新たな、生贄を差し出そうとしています。」

「新たな生贄?」

るか様も、驚いている。


「生贄はもうよいと、村人に伝えてくれ。」

「いいえ。伝えても、村人は信じてくれません。」

だって、水神様がここにいるなんて、誰も信じない。

「信じる。村人が我の存在を信じているからこそ、我はこのお社にいる事ができるのだ。」

「存在を信じていても、私の言う事を、信じてもらえません。」

「それは、困った。」


るか様は、悲しそうな顔をしている。

「……新しい生贄は、るか様の妻になりますか。」

「馬鹿な。」

そう言うとるか様は、私を抱き寄せた。
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