嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
「ううん。水神様は私を求めているの。私以外は受け入れないわ。」

そしてまた村人は、ざわつく。

「でも、お殿様の許可が、下りない。」

「そうだ、そうだ。」

私は、お父様に頭を下げた。

「お父様。どうかお許し下さい。」

「駄目だ。」

お父様にはあっさりと断られた。


「返された物を戻す訳にはいかない。お供え物もそうだし、生贄もそうだ。」

「でも、私じゃないと、駄目なんです。」

今までお父様に逆らった事はないけれど、今回だけは後に退けない。

「お願いです。もう一度私を、水神様のところへ行かせてください。」

「駄目だ。」

見かねたお母様が、私を離し合いの場から、引き下げた。


「どうしてつきは、頑固になったの。」

「私と水神様の問題だからよ。」

お母様は、はぁーっとため息をついた。

「せっかく助かって、家に戻って来たのに。また苦しい思いをする事ないでしょ。」

「苦しくなんかないわ。」

「嘘をおっしゃい。」
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