嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
お母様は、私の肩を掴んだ。

「お願いだから、もう生贄になるだなんて、言わないで。静かになったら、いい人と結婚させるから。」

「それは、嫌。」

私は、お母様の手を振り払った。

「私は、水神様と結婚したの。他の人とは結婚しないわ。」

「つき。いい加減にしなさい。」

いくら言われても、私にだって譲れない思いがある。

「前に、好きな人がいるって、言ったよね。」

「あの、助けてくれたっていう人?その人と結婚したいなら、その人を探すわ。」

「それが、水神様なの。」

お母様は、”またおかしな話を始めた”という顔をしている。

「つき。水神様は、まやかしの存在なのよ。」

「ううん。本当にいるわ。そして私達を、見守ってくれている。」


そう、湖のお社で、私達の安寧を願い続けている。


「それは私達が作った、嘘よ。」

「嘘じゃないの。信じて!」

るか様は、本当にいるの。

あの綺麗な人は、本当に存在するんだから。
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