囚われて、逃げられない
排除される
野々花が席を外すと、同僚達は小声で話しだした。

「もう!ダメだよ、あれ以上言ったら私達も殺されちゃうんだからね!」
「わかってるよ。でもまさか、光永課長があんな恐ろしい人なんて思わなかった……」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
東生が言ったように、ここの課はつい半月前まで今の1.5倍の社員がいた。

でも、全て泰氏によって殺された。

泰氏が転勤してきて一気に社員達の注目を集めた為、当然嫉妬される。
泰氏を陥れようとする、社員がいた。
そこにやたら、突っかかってくる社員がいた。

「課長!早く、チェックお願いします!」
「あれ?言ってなかったですかね?会議の時間、今日の10時だって!」

でも、泰氏は特に気にすることなくこなしていた。
高校の時の嫌がらせもそうだが、泰氏にとって嫌がらせされても何も感じないのだ。

野々花への愛情もそうだが、泰氏の感覚や思考は普通と違う。
泰氏にとって苦痛なのは、野々花に嫌われること、野々花に触れられないこと、会えないこと、離れることだ。
だから、野々花以外に何をされても何も感じない。

高校の時の嫌がらせも、野々花の気を引きたくて嫌がらせに耐えてる“フリ”をしたにすぎない。
必死に泰氏の力になろうとしている野々花に、ぞくぞくしていたのだ。

だから会社でも、どんな嫌がらせされようと何も感じない。淡々とこなしていた。
もっと言えば、それを利用して更に野々花の気を引けるとワクワクしていたのだ。
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