囚われて、逃げられない
「野々は、可愛すぎるよ?」
「それはないよ」
「どうして?」
「私…地味だし、目立たないし……」
ぶつぶつと呟く野々花。

「俺は野々しか、見えないよ」
「え?」
「野々しか、見たくない」
「泰氏くん?」
「野々にしか、見てほしくない」
「うん…」
「だからね、目立つ必要ないよ?
じゃないと、他の人間が野々を見るでしょ?」
「それは大丈夫だと思うけどな…」

家に戻り、一緒にソファに並んで座りTVを見ている。
「野々、煙草吸っていい?」
「もちろん!
あ、泰氏くん」
「んー?」
「いちいち私に断らなくても、大丈夫だよ?」
「ん?」
「煙草」
「うーん、それはダメだよ?」
「どうして?」
「野々は吸わないでしょ?」
「うん」
「だからね、ちゃんと確認してからじゃないと失礼でしょ?」
煙草を咥えた泰氏が、野々花の頭をポンポンと撫でた。

「でもね…」
「ん?」
「私は泰氏くんの…」
「うん」
「恋人だよ?」
「うん、そうだよ」
「だから…気をつかわないで?」
上目遣いに泰氏を見上げた、野々花。

「……っ…////」
野々花の上目遣いと可愛い言葉。
それだけでもう……泰氏は身体がゾクゾクして昂っていた。
煙草を灰皿に押し潰して、俯いた。
「え?泰氏くん?大丈夫?なんか顔が赤い……」

「狡いよ、野々…」
「へ?
━━━━━━━キャッ!!」
そのままソファに押し倒す、泰氏。
「これ以上…心を奪わないでよ!」

そして抱かれて、果てた二人だった。
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