囚われて、逃げられない
「可愛い…可愛いなぁ~野々」
「カッコいいなぁ~泰氏くん」
「ハハッ…!」
「フフ…
ふぁぁ~」
「眠い?野々…」
ソファの上で組み敷いたまま、頬を撫でる泰氏。

「うん…でも、もう少し泰氏くんを見てたいなぁ…」
「フフ…じゃあ、とりあえず風呂入ろ?」
野々花を抱き上げる、泰氏。
「え?泰氏くん、自分で歩けるよ?」
「ダーメ!」

身体を洗い合って、浴槽に並んで入る。
「ほんと、大きなお風呂だね~!」
「まぁね。
……って言っても、じぃちゃんのマンションだけどね!」
「凄い人だって聞いたよ?」
「誰に?」
「東生くん」
「またか…」
「え?」
「野々」
「ん?」
「上!」
「上?」
野々花は風呂場の天井を見上げる。

「そうじゃなくて!」
そう言うと、野々花の腰を持ち上げた。
「ひやぁ…!な、何!?」
「膝の上に、乗って?」
泰氏は自身の膝の上に、野々花を乗せ跨がらせた。

「ど、どうしたの?」
「東生ってさ、野々のこと好きだよね?」
「え!?まさか!」
「なんで、そう思うの?」
「だって、好みじゃないって言われたことあるし…
東生くん、面食いだし」
「野々って、天然?それともバカ?」

「ばっ…泰氏くんまで、バカって言わないで!」
「……泰氏くん“まで”って何?
あー、東生にも言われたんだ!バカって!」
「え……」

「バレバレ…それに、バカって言ったのは全然気づいてないからだよ!
東生の気持ちに。
ほんと、そうゆうとこ…鈍感だよね?」
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