囚われて、逃げられない
「光永って、異常じゃん!」
「え?」
「ラインだって凄かったし、仕事も私情を挟んで野々花を視界から離さないようにしてる。
どうせ、家の中でも縛られてんだろ?
野々花、どうしちゃっんだよ!
いくら憧れてた奴だからって、こんなのおかしいよ!」
「だから、それは!
言ったでしょ?わかった上で恋人になったんだって!」

「人殺しの彼女に自分からなったっつうのかよ!?」
東生に壁に押しつけられ、ぶつけるように言う東生。

「え……」
「光永 泰氏は、人殺しだぞ!目を覚ませ!野々花!!」
「どこにそんな証拠が……」
「証拠はねぇけど……」
「だったら!変なこと言わないで!!」

「なーにやってのかなぁ!」
「はっ!泰氏くん!!」
そこへ壁に寄りかかって、腕を組んだ泰氏が立っていた。
「勝手に“俺の”野々に触らないでよ!」
「人殺しが!何言ってんだよ!?」
「は?だったら、証拠!ここに持ってきて!」
「………」
「君さぁ、野々が自分のモノにならないからって、俺に突っかかり過ぎ!」
「は?違う!」
「じゃあ、何?」
「お前が普通の男なら、こんなことしない。
野々花が高校の時から憧れてた奴だから。
でも、こんな異常な奴ってわかったら、助けてあげたいって思うのが普通だろ!?」

「普通、普通って、うるさいなぁ…!!」
「は?」

「俺は“普通”じゃないよ?」

「お前…何、言って━━━━」

ゆっくり野々花と東生の方に向かって来る、泰氏。
そして野々花を腕の中に抱きしめ、東生を見据えて言った。
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