囚われて、逃げられない
「野々、煙草吸ってもいい?」
「うん、もちろん!どうぞ!」
泰氏が煙草を咥え、火をつけ、少し吸って、指で煙草を挟んで、煙を吐く。
この一連の流れに、野々花は見惚れていた。

「カッコいい……」

紅茶が運ばれて来た。
「んー!美味しい~」
「ん。確かに!」
「泰氏くん、今日はありがとう!
さっきもレストランもだけど、紅茶も美味しい!」
「うん、でも紅茶のこと誰に聞いたの?」
「東生くんだよ」

「は?」
「え………」
明らかな泰氏の嫌悪感丸出しの表情。

“嫉妬”という感情は、これ程までに胸くそ悪くなるものなのか………

「誰?それ」
「え?私達の勤めてる会社の、社長の息子さんだよ」
「あー、そうだったな。
野々、仲良いの?」
「大学生の時の同級生なの。
しかも、友達の元彼さんで、就活の時も会社を紹介してもらったの。色々お世話になってて……」

「好きなの?ソイツのこと。
それに、さっきのレストランでもオーナーと微笑み合ってたし。惚れた?」
「へ?
まさか!だって、私が好きなのは泰氏くんだし!」
頭をぶるぶる振りながら、目を丸くする野々花。

「え……」
「あ…わ、私、今、何て言った?」
「それ、ほんと?」
足を組んで、身体ごと野々花に向いて話していた泰氏。煙草を灰皿に潰した。
首を傾げて、顔を覗き込んで言った。

「うん…
私も、ずっと憧れてたよ。泰氏くんのこと。
高校生になって、泰氏くん一気に学校中の人気をさらったでしょ?
その位、キラキラしてて綺麗で……
泰氏くんの虐めも、なんとか力になりたくて……
だから、出きることはしてきたつもりだし」
意を決して話す、野々花。

それを静かに聞いていた泰氏は、野々花の頬に触れた。
「どうしよう…凄く嬉しい……
決意、鈍りそうだな……」
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