囚われて、逃げられない
「決意?」
「うん、野々の恋人になりたい。
でも俺…束縛しちゃうと思うんだ。離れたくなくなるから、同棲もしたいし。
それに嫉妬深いし、周りも見えなくなるんだ。
だから、野々に逃げ道を作っておきたくて……
でも、そんなこと言われたら……今すぐにでも野々が欲しくなる。
今すぐに恋人にして、好きだよって抱き締めて、キスして……このまま、家に連れ去ると思うんだ。
だからね、今必死に理性で抑えてるとこ」

「私、恋人になりたい!」
野々花は泰氏を真っ直ぐ見て、思いをぶつけた。

「ダメだよ?
そんなこと言ったら、止まらない……
今日は、帰ろ?
送るから!」
「うん…」

ゆっくり並んで歩く二人。
口数も少なく、野々花は不安になる。
「泰氏くん」
「ん?」
「私、安易に言ったんじゃないからね!」
「え?」
「さっきの……
恋人になりたいって言ったの」
「うん」
「ずっと憧れてたから……
泰氏くんに好きって言ってもらえて、舞い上がってはいるけど……」
「うん…」
「私、もう少し考えてまた伝えるから、聞いてくれる?」
「わかった!じゃあ…野々の気持ちが固まるまで待つ!」

丁度野々花の住むアパートに着いた。
「じゃあ…また明日ね!」

泰氏が帰りながら、一度振り向くと野々花が手を振っていた。
微笑んで振り返しながら呟いた。
「反則だろ…////
可愛すぎっつうの!!」

そして野々花も。
「ほんと、カッコいい~!綺麗な人……」

二人はお互いに心を奪われていた。

次の日の朝、アパートを出ると既に泰氏がいた。
「おはよ、野々」
「おはよう!」
「一緒に行こ?」
「うん!いつから待ってたの?」

「うーん、一時間前?」
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